近年インターンシップを実施する企業が増えてきており、学生の皆さんも関心が高まっていると思いますが、間もなく卒業予定の21卒の学生のインターンの状況はどうなのでしょうか。今後参加してみようと考えている学生の皆さんの参考になればと思います。
21卒のインターン、就職活動を取り巻く環境
インターンは、企業の仕事を体験できる「就業機会提供」の場です。将来「働く」ことをイメージし、就職活動チャンスを広げるために、興味関心のある企業や業種のインターンに参加する学生が増えています。
通常、インターンと言えば会社へ出社し、企業の方と直接コミュニケーションがとれる距離でインターン業務に取り組むものでした。
ですが、新型コロナウィルス感染症拡大をはじめ、社会情勢の変化に伴い、在宅でできるインターンが増えるなど、働き方が変わってきています。
では、就職活動はどうでしょうか。
大学に入学したての1年生にとっては、まだなじみがないかと思いますが、これから就職活動を迎える3、4年生はもちろん、1、2年生も早くから情報を集めるに越したことはありません。
毎年、就活シーズンになると、就職活動に関するスケジュール、ネットやSNSの発信など、様々な情報が飛び交います。
情報の見極め方を磨くために、「過去、実際に起きたできごと」から学ぶのはとても良い方法です。 では、ここから具体的に、21卒生のインターン、就職活動状況を振り返ってみましょう。
21年卒学生の就職活動について
先ずは21卒の就職活動状況からみていきましょう。
通常、就職活動には大きく分けて以下のステップがあります。
・大学、企業やリクルートなどの求人広告会社が主催する就職ガイダンスへの参加
・新卒募集に関する企業説明会
・行きたい企業の絞り込み
・エントリーシートの作成、提出
・企業面接(複数回ある企業が多いです)
・採用
大学受験で受験校を決めるときと一部似ているかもしれません。
ここでは、21卒生の就活ステップと、先輩方の就活ステップの違いについてみていきます。
2020年新型コロナウィルス感染症拡大の影響で私たちの生活が大きく変わりましたが、当然就職活動にも大きな影響を与えました。例えば、大学開催の就職ガイダンスが中止、延期となりました。
また、2020年2月株式会社リクルートキャリアが合同説明会を中止すると発表し、その後他の求人広告会社も相次いで中止を発表しました。採用活動についても、採用自体を進めるのか、休止するのか、やるとしたら、面接等はオンラインか対面かなど、企業、学生とも刻一刻変わる社会情勢の中で、難しい状況でした。
従来の活動方法とは大きく異なったのが、21年卒の学生の就職活動の環境でした。
政府の要請
就職活動には「新卒生を募集する企業」に対するルールがあります。新卒生募集に一定のルールを設けることで、就職活動を行う大学生が公平に、安心して就職活動を実施できるようにするためです。このルールは日本の大企業や団体が集まりつくられた『日本経済団体連合会(日本経団連)』と政府で決めています。
では、21卒生の就職活動における政府側など外部の状況について振り返ってみましょう。
21年卒の就職活動は、一般的には2020年3月広報解禁、6月選考解禁、10月内定式といったスケジュールでした。ここは例年と変わりがありませんでした。
インターンに関してはどうだったのでしょうか。
後ほど記載している「3.21卒のインターンはいつ開催していたのか」で詳しく説明しますが、インターンは就職活動と違い、通年採用しています。また、参加学年は不問のケースもあり、一般的には採用に直結しないという「前提」です。
ここで注目してほしいのが「前提」とした理由。
実は、インターンを「就労機会の提供」としてではなく、「採用プロセスの一部」としている企業があります。
採用にはルールがあり、学生と接点を持つには日本経団連や政府が定めたスケジュールに合わせなければなりませんが、インターンという名目に変えることで、就活スケジュールをコントロールしたいという企業側の思惑が一部あるのかもしれません。
これでは、正当に就職活動をしたい学生、本来のインターン活動をしたい学生どちらにとっても嬉しくないですよね。
こうした背景もあり、2019年3月26日日本経済新聞「採用直結のインターン、政府が自粛を要請 21年春入社の就活ルール」によると、政府はインターンシップに関して、採用の選考と直結しないように企業側に求めたとの事です。ルール案内先を18年度の約2.5倍にし、企業に対して周知を図りました。 本記事からも、インターンを通じた採用活動や選考は、就職活動の過度な早期化につながると政府が懸念を抱いている事がわかります。
通年採用開始なるか
通年採用とは、1年間を通じて採用活動を行うことです。「1-2政府の要請」でもお伝えしましたが、日本は、大学3年生の3月に情報解禁、大学4年生の6月に選考開始という一定のルールに沿って行う、新卒一括採用が一般的です。
しかし、人口の減少、終身雇用制度の崩壊、グローバル化等、時代背景が大きく変わり、従来の新卒一括採用では成り立たなくなってきています。そこで、時代の変化に対応して、経団連と大学側で合意したのが背景です。
ところが、通年採用は21卒からとの話がありましたが、まだ始まっていないのが現状です。
では、通年採用になることで、学生にとってどんな影響があるのでしょうか?
まず、通年採用のメリットですが、就職活動のスケジュールに余裕が出来ることです。新卒一括採用と比較し、採用時期が長いため、説明会や面接の日程が重なる可能性が減る事で、学生は準備期間を確保する事が可能になり、余裕を持って活動ができます。
一方、デメリットは、新卒一括採用よりも選考基準が高くなることです。学生側と同様、企業側にもスケジュールの余裕ができるため、「その人材は本当に必要なのか」など時間をかけて検討可能なため、人材に対する期待度が高くより厳しく見られます。
また、学生の自発性が求められます。新卒一括採用の時は、周りの学生が同じ動きをするので、その流れに乗って行動すればある程度は活動が可能でした。しかし通年採用は、企業ごとに独自の採用活動があるため、入社したい企業を自分で決め、その企業の採用時期や選考過程に合わせて就職活動を実施するといった自発的な姿勢が必要になります。企業ごとに採用スケジュールを調べ、正確なスケジュール管理をしていく必要があります。
では、通年採用が始まるとインターンへの影響はあるのでしょうか?
現状、多くのインターンシップは、主に就職活動対象の大学3年生、大学院1年生を対象に、採用の広報解禁の3月1日より早い時期に実施されています。本来の目的の「就業機会の提供」もありますが、セミナー型など「企業を知ってもらう」ものが多いのが実情です。
通年採用は、「いつ採用活動を行ってもよい」という意味に置き換えられているとも言われており、定義や解釈がバラバラです。
そういった実情から考えると、通年採用が開始されることで、インターンシップ時期が前倒しになったり、分散したりする可能性があります。
ただし、インターンを採用活動の一環ではなく、本来の「就業機会の提供」という目的から考えれば、通年採用になったとしても、インターンが開催されるタイミングは不変ですし、学年関係なく、大学1年生から参加できるものが今以上に増えると考えます。
21卒のインターン参加について
コロナ禍でイレギュラーとなった21卒のインターンや就職活動でしたが、実際21卒の学生はインターンに参加できていたのでしょうか。
21卒はどれぐらいインターンに参加していたのか
PRTIMES「【2021年卒学生の就職意識調査】」によると、2021年卒学生のうち86.7%がインターンシップ参加を経験しているとの事。 また、ビズリーチキャンパス「22卒必見!21卒の先輩おすすめインターンシップランキング」によると、ビズリーチキャンパス登録者である21卒の方々のうち、インターンに参加したことがあると答えたのは92%との事から、コロナ禍とはいえども、約8~9割の学生が積極的に何かしらのインターンに参加していたことが分かります。
21卒のインターン参加者と内定の関係は?
では、21卒のインターンに参加した学生は、実際どれくらいの学生が内定をもらえたのでしょうか。以下の情報は、2020年6月時点での内々定段階のものですが、参考になるかと思います。
21卒 インターン参加における内々定状況
未内々定 | 内々定有活動継続 | 就職活動終了 | |
インターン不参加 | 32.1% | 14.1% | 10.1% |
インターン参加 | 67.9% | 85.9% | 89.9% |
インターンに参加したからといって必ずしも内定が貰えるわけではありませんし、むしろ未内々定者の割合は、インターン参加者の方が高くなっています。
一方で、就職活動終了者の割合は、インターン参加者の方が高くなっている事から、インターンを通して、将来の働くイメージを具体的に持つことができ、自身の意向がより明確になった事から、活動期間が比較的コンパクトになったと考えられます。
よってインターンに参加することで、同じ活動期間でもより質の高い就職活動が出来ていると考えられます。
21卒のインターンはいつ開催していたのか?
コロナで前年のスケジュール感が参考になりづらかった、21卒のインターン。
中止になったり、開催方法が大きく変わったりと学生の皆さんも戸惑う事が多かった年でしたが、開催の時期はどうだったのでしょうか。
夏季
大学の夏休み期間中に行われる、サマーインターンと言われているもので、21卒の学生は主に、2019年7月~9月に参加していました。
サマーインターンは比較的早い段階から就業体験ができるので、その後の就職活動準備に大いに役立つ経験となります。
秋季
夏休みが終わり、後期授業が始まるため、サマーインターンに比べると件数も参加人数も減少傾向です。実施期間は夏に比べると1dayなど短いものが多いです。21卒の学生は主に2019年9月~11月の時期に参加しています。
冬季
大学の冬休み期間中に行われ、時期は2019年12月~2020年2月でした。夏季と同様、長期休みのタイミングのため、募集数も応募者数も多いのが特徴です。
本件は一般的によく開催される時期をお伝えしましたが、企業によっては年単位など、より長期のインターンを実施しているところもあります。
株式会社ディスコ キャリタスサー「インターンシップに関する調査」によると、21卒は8月の参加が最も多く、9月も参加を伸ばしている事から、例年に比べ前倒しの傾向が高まりました。やはりコロナ禍で状況がどうなるかわからない中、早めに動こうといった学生の意識が高かった事が見て取れます。
21卒インターン種類
例年通り開催されていたとはいえ、コロナ禍の状況のため、開催様式や職種に影響はあったのでしょうか。
従来は出社前提が主流だったため、内容によっては開催が無かった企業・職種があったのか等、気になる所だと思います。
職種
営業
例)クライアントのニーズを聞きだし、顧客にあった提案型営業等。実際の顧客との接触が難しいケースは、企業より課題が与えられ、最終プレゼンを実施する事で代替するケースがあります。
情報システム関連
例)ECサイト等のシステム全般に関わる企画・開発、場合によっては導入まで一貫して行います。
新規事業・企画
例)市場調査や顧客分析の方法を学んだうえで、商品の機能やデザインを企画します。
広告宣伝・マーケティング
例)商品を宣伝する為のターゲティング・購買までのストーリーを考えます。広告作り、顧客への情報発信等を行ないます。
期間
・短期
半日、1日など企業の説明、グループワーク、事業内容に関するセミナー等座学が中心になります。他にも先輩社員との交流等企業により様々ですが、オンラインでの開催も多く、期間的にも学生も比較的参加しやすかったものです。
・中期
1週間程度で、連日日程で開催される場合もあれば、隔週で開催される場合もあります。プレゼンテーションを行う等の機会もあり、短期に比べるとより、企業に対する理解度が高まります。
・長期
1ヶ月以上実施するもので、企業によっては年単位で行われる場合もあり、時給や日給として、給与が支払われるケースが多いことも特徴です。実際に業務を行なうことが多く、実践型インターンシップと呼ばれます。実践とはいえ、情勢に応じて一部テレワークを組み合わせながら実施する企業もあります。
終わりに
21卒の学生のインターン状況についてお伝えてしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
コロナ禍でスケジュールや、やり方は従来とは異なったものの、インターン自体は開催されていますし、学生も積極的に参加していました。
今後もwithコロナの状況は当面続きそうですが、企業は多くの学生の皆さんとの出会いを心待ちにしています。社会情勢に応じて、インターンの時期ややり方等が変わっていく可能性がありますが、何かしらの形で実施されていく事は不変と考えます。
繰り返しお伝えしていますが、インターンは、一定期間企業で働くことができる「就業機会提供」の場です。
就職活動のためだけではなく、もっと広く、「自分の将来の仕事について考える機会」として、まずは関心のある業界や職種を考え、リサーチしてみてはいかがでしょうか。そして、気になった企業や職種でインターンの開催があれば、積極的に参加してみましょう。